「さくら」香るとき・・・

「なんだか、未だに釈然としないんだよねぇ」

煙草の煙を目で追うようにゆっくりと吐き出す。
銘柄は「さくら」
この時期が近づくと吸いたくなるのだ。限定商品で手に入れるのが面倒くさかったが無理やり取り寄せた。

「なぁんで、ここにいるんだろう」

故国を離れイタリアの地に根を下ろし、はや5年。
昔の旧友たちは今頃就職したばかりの初々しい新入社員やなんやらになっているのだろうと思って、少しばかり羨ましくなる。
再び煙草を口に含む。柔らかな香りが広がる。
普段吸っている「峰」は吸いやすいが香ばしい香りの銘柄で「さくら」とは反対の香りだ。なんて言ってみるが実際のところ、自分はそこまで煙草好きではない。
煙草についていろいろ聞くなら、自分の右腕と豪語するあのスモーキン・ボムに尋ねたほうがよっぽどマシな講釈をしてくれるだろう。

「はぁ」

漢字銘柄の煙草にこだわるのは単純に故国が恋しくなったから。
10年前までは関わることのなかったイタリア語に囲まれ過ごしていると時たまあの苦手であった古文やら漢文やらを思い出して漢字が恋しくなるのだ。
苦手だったのはそれだけじゃなかったけど・・・・・・

「なに感傷にひたってやがる」

「リボーン」

自分よりいくつも年下の目付け役が多少苛立った風にドアにもたれ掛っていた。いつの間に来たのやら、全くもって神出鬼没だ。
「急に出て来るなよ。びっくりするだろ」
「ボンゴレ十代目が何言ってやがる。早く出て来い。もう時間だ」
「ちょっとぐらい良いだろ?」
もう一口煙を吸う。
肺までいれてゆっくりと吐き出す。いっしょにため息もこぼしながら。
煙草をめったに吸わない俺には外国産のものより日本産の方があっている。日本産のほうが癖が強すぎなくてきつくないんだ。

「・・・・・・なんだ?怖気ついてるのか」

そんな俺を見て茶化すようにリボーンは聞いてくる、がその目は笑っていない。
だってしょうがないだろう?こんな環境に放り込まれて10年は経つが慣れやしないんだから。
「だとしたら悪い?だって、いつ殺し合いになるか分からないぢゃない」
だから心の準備、と笑いながら「さくら」の香りを楽しむ。
穏便に話し合いで解決しようと口で言ったって、血気盛んな奴らはすぐに実力行使といわんばかりに力にでる。そのパターンになれてはきたが、人殺しの行為になれやしない。
・・・・・・なれない、というよりも人殺しにはまってしまって抜け出せなくなったら困るなぁというものだ。だって、そんなことになったら日本に残してきた母さんが悲しむだろ?

「・・・・・・心の準備とやらができたらさっさと表に出て来い。ダメツナ」

下で痺れを切らしそうな仲間をなだめるために彼は部屋から出て行った。
リボーンだけがいつまでも変わらない俺の古い呼び名を言い捨てて。

「はは、ひどいなぁ」

乾いた笑いをこぼして、まだ半分ほど残っている「さくら」を灰皿に押し付ける。
ジジッと小さく煙草がなった。


いつになれば、桜咲く日本に帰国することが出来るだろうか――


苦手なマイ設定。
ツナは高校卒業後にイタリアに拠点を移すのだと思う。
そんでもって、ママンは日本に置いてきぼり。
(危ないところにあのママンを置いておきたくないから)
イタリアに渡ってからは、日本に滅多なことじゃ帰れないツナヨシ君。
そして現状に段々開き直って、スレテく綱吉君。萌えー!!
リボーンに鍛えられただけあってタダじゃ起きません、精神で☆
・・・そんなかんじです。
というわけで、このツナヨシ君は推定23歳ごろです。美味しい頃合です。
2007/03/25

って言う、妄想を1年ほど前にしていました。
・・・あばば、10年後設定が本誌・コミック・アニメに出ているので・・・色々アウトなのですが、そこは優しいまなざしで見守ってください。
世間様では、ボンゴレT世の話題で犇いているようですね
・・・・・・話題に乗れない人間、文弥です。(イタス
2008/05/01